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二つの"私の似顔絵"

20

(水)

05月

エッセイ

私は、最近二つの"私の似顔絵"をいただいた。
一つは今回の当院のWEBサイトのリニューアルにあたって、制作チーフのG君が、わざわざイラストレーターの安西水丸氏にお願いした作品である(上左)。このイラストは、これまでの病院のホームページにはなかった特色を出すことをねらった今回の試みの目玉としてWEBサイト上で活躍している。その持ち味は多くの方々からすこぶるいい評価を得ている。
そして、二つ目の作品は、数年前「ブラックジャックによろしく:精神科編」の取材目的で当院に体験入院をしていただいた漫画家の佐藤秀峰氏作である(上右)。その体験入院当時のいきさつは「マスコミを受け入れるということ (日本精神科病院協会雑誌別刷2008 Vol27 No.4)」に紹介している。そして、それはまた、当院WEBサイトの「NISHIWAKI-NET」:KENちゃん先生ノートにも掲載している。一度お読みいただければ幸いである。
そんな佐藤秀峰氏が個人のWEBサイトを開設されたことを知り、その「佐藤秀峰onWeb」(http://satoshuho.com/index.html)を開いてみた。さすがである、なかなかこった面白い内容になっていた。そこの掲示板にご無沙汰のご挨拶と当院のWEBサイトがリニューアルされると書き込んでおいたところ、佐藤氏から直ぐにメールでの返事をいただいた。それは、彼のWEBサイト内の「漫画制作日記」なるコーナーに当院への取材時の入院体験を書かせてもらえないか、といったものであった。私としては何の異論もない、書いていただくことにした。その内容は「漫画制作日記」の3月12日、13日に漫画家の佐藤秀峰氏らしく、小学校の夏休みの宿題を思い出す絵日記風のもので書かれ、描かれてあった。そこに"私の似顔絵"も登場していた。そこで今度は私が、その"私の似顔絵"を当院のWEBサイトにも載せさせていただきたいとお願いしてみたら、心良く快諾、わざわざ「漫画制作日記」のものに手を加えてメールで添付送信していただいた。感謝である。

しかし私は、幼い頃は可愛い、少年期から青年期にかけては美男子、壮年期から老年期においては素敵なロマンチックなおじ様(おじい様)で人生を貫き通して行くものと自負していた。そんなことで、安西水丸氏、佐藤秀峰氏の描かれた"私の似顔絵"は、最初は私の中にある私とは些か違和感のあるものであった。とくに佐藤氏の"私の似顔絵"は...(笑)。だが、両巨匠が私をジーと観察し、お一人、お一人がそれなりに、私の表面のいらぬものを削ぎ取り、内面をも見透かして描かれた"私の似顔絵"である。となると、何れもやはり私なんだ。今回5月に更新された当院のWEBサイト、「NISHIWAKI‐NET」のMOVIE「ドクター・ネットリレー」で、西脇診療所所長の杉本ドクターが「患者さんと自分との関係を見ているもう一人の自分がいる...それが他の科と精神科の違い...」と語っていたが、さしずめ、私はこの多少趣の異なるもう二人の自分、安西水丸作品と佐藤秀峰作品が、私と患者さんとの治療関係を見守ってくれていることになる。とても心強い限りである。

また、まだしばらく先のつもりではいるが、いずれ何もない世界に行かねばならない。その時は冥土の土産とやらで、この二作品(私の似顔絵)を持って行こうと思っている。そして、ご先祖さま方に見せて自慢してみよう。そうすると、そこできっと「わしは川原慶賀に描いてもろうた!」と、おっしゃる江戸時代のご先祖さまが現れるに違いないのだ。ミーハーな私のご先祖さまだからね...。

安西水丸:イラストレーター、エッセイストなど、様々な領域で多彩な活躍。
村上春樹著書のブックカバーのイラストも多く手がけている。
佐藤秀峰:漫画家。代表作「ブラックジャックによろしく」「海猿」
「特攻の島」など。
川原慶賀:江戸時代、日本滞在中のオランダ医師シーボルトに仕えた
長崎の絵師。シーボルトの依頼で日本近海の魚類、
日本の植物などの緻密な絵画を多数残している。