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エッセイ

第33回日本アルコール関連問題学会が、来年(2011年)、九州佐賀県で開催される。九州での開催であることから、私も運営委員を仰せつかった。最近は、この学会参加については、不義理を通しているが、この学会には私なりに思い入れがある。そうだなぁ~、もう35年以上も昔のことになる。
当時20代後半の私は、長崎県ではただ一人でアルコール医療に取り組んでいた。そんな中、大阪ではすでに母校大阪医大出身の精神科医らが他大学出身の精神科医と協力してアルコール医療に関わり、かなりの成果を上げていた。その一人である私とほぼ同期の平野健二君(現:新阿武山クリニック所長)が、私が行なっている長崎でのアルコール医療の試みを気遣って訪ねて来てくれた。ここでほぼ同期といったのは、医学部は浪人、落第などの関係で歳は上でも学年は一学年、いや数学年下ということがよくあるからである。ただ、ここでは、どちらがどうかは控えておこう。
さてその折に、彼と一緒に縦長の長崎県の中央部、諫早(いさはや)市に当時あった長崎県精神保健センターを訪れた。それは、ちょうど昼食時(どき)だった。いや、その昼食時を狙って行ったのである。何となれば、諫早は古くからウナギ料理が名物であった。そしてそこで、センター長の川崎ナオミ先生(以前のブログ「古いアルバム」でご紹介)にお願いして特上のうな重をとっていただいた。もちろん、私は二人前の特上うな重の料金を支払った記憶はない。多分、川崎所長のおごり、それとも県の裏金だったのかなぁ? もう時効である。
とにかく、若い平野君と私の胃袋は満された。そこで、どちらからともなく‟大阪医大卒の精神科医はアルコール医療に携わっているのが多いな、一度集まって同窓会みたいなことしないか"といった話題になった。そして、大阪に帰った平野君は早速、その話を先輩のこれもまた「古いアルバム」でご紹介した今道先生に伝えたのである。それではと、大阪医大卒でアルコール医療に関わっている諸先生方に呼びかけを始めたところ、山陰地方で実に熱心にアルコール医療に取り組んでおられるF先生より、是非参加したいとの申し出があった。しかし、彼は大阪医大の卒業生ではない。そこで今道先生、当時、国立で唯一アルコール医療を実践していた国立久里浜療養所(現:国立病院機構久里浜アルコール症センター)のK先生に相談。そうしたところ、K先生が大喜びされ、全国で孤軍奮闘しているアルコール医療に携わる精神科医療従事者の集まりを、と全国に呼びかけ、確かその年のうちに大阪で発起人会が行なわれた。そして翌年、第1回の「アルコール医療研究会」が東京で開催された。そして、その経過の中で、「アルコール医療研究会」が「アルコール関連問題学会」と名称変更されて今日に至っている。早いものである、その33回目の学会が、来年、佐賀で開催されることになった。

そのアルコール関連問題だが、私は、大きく二つに分けることができると思っている。
一つはアルコールに直接関係する問題である。最も注目を集めているのは飲酒運転であろう。それにドメスティックバイオレンス、さらには自殺と飲酒の関係が問題になっている。それに、従来から医学的に取り組まれているアルコール起因の心身両面の健康問題である。
そして、もう一つのアルコール関連問題はというと、他の物質依存、行為依存、対人依存といった異なる依存対象、つまり薬物、ギャンブル、人間関係とのクロスアディクション(複合依存)と、今後、大きな社会問題になるであろう「うつ病、強迫性障害、社交不安障害、人格障害」といったその他の精神科疾患との重複障害である。

この二つの関連問題は何れも、これからの日本における国民の日常生活どころか、日本の経済にも深刻な影響を与えるのは間違いない。しかし、これら関連問題を統括した上で、それを改めて個々に医学的な観点のみではなく、社会学、法律学、経済学、文化人類学などからの知識と知恵を結集して、様々な視点から、検証、検討を加え、議論されたことは、これまでほとんどなかった、といっていい。加えて、国民のこの問題に関する認識は極めて希薄である。
本当は、このアルコール飲料に関わる関連問題は、今、官民一体となって非常に熱心に取り組まれている禁煙キャンペーン、受動喫煙どころの問題ではないはずなのだが・・・。

次回は、その喫煙、禁煙に関する興味ある書物を紹介してみたい。