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エッセイ

久しぶりに、広瀬隆の著書を読んだ。タイトルは「二酸化炭素温暖化説の崩壊」(集英社)である。彼の著書との出会いは20数年前になる。それは「億万長者はハリウッドを殺す」1986年刊:(講談社)であった。内容は、ネバダの核実験場の近くでハリウッド映画、とくに西部劇の撮影が行なわれることで、ジョン・ウエイン、スチーブ・マッキンらの俳優が癌に侵され亡くなっていることを紹介。その核開発、原発建設にアメリカの多くの巨大企業、資本家が関わっている、といったものであった。
そんな彼が、IPPCの報告書の捏造を暴露したクライメートゲート事件にふれ、現在の気候変動は、地球の地軸のわずかな傾き、太陽を回る軌道周期の変化、太陽の活発化による太陽風の強まりなどを要因としている、と指摘している。その上で、ここでも、エコ利権を取り上げ、その利権に群がる資本家を問題にし、人類存続のためには、他に様々な重要課題があること、それなのに我々は「エコ=CO2削減」で、それらから目をそらさせられているのでは、と書いている。
そういった興味深い内容の書であるが、本題からそれるので、このくらいにしておく。ただ、今回のテーマに関連したこととして、今年の日本の猛暑で発生している熱中症にも関連することだが、2003年の西ヨーロッパ、とくにパリでの熱波で多数の孤独な老人の死者が出たことにふれている。そして、それはCO2による温暖化がもたらしたものではないことを当時の世界の気象状況から説明している。それも、今年の日本の現象と同様に、人類の長寿化、高齢者が増え、こんな猛暑の夏に耐えられなかった方が多かった、と言っていいのではないだろうか。また、広瀬氏は著書の中で、数年前、中国、ロシアで激寒の時期に高齢者の方が多く亡くなったことについて、ほとんど報道されなかったのは作為的であるとふれている。
そして、つい最近、養老孟氏が何かの番組で、癌が増えたのは「癌になるまで多くの人間が生きるようになったからだ」と語っていた。その通りだと思う。以前にもふれたが、本来、地球上での人類の適正規模は、200~300万(人)程度で、平均寿命も30歳位であった。だから古くから、そんなに長くない人の人生を上手く生活の営みの中に反映させていく工夫がなされ、そこに高齢者の役割が存在していたようである。

地元長崎には、江戸時代から「お宮日(おくにち)」という諏訪大社のお祭りがある。長崎の各町内はその10月7・8・9日の祭りに華麗な奉納踊りを披露する。しかし、その奉納踊りを披露できる「踊り町」は、各町が交代で行ない7年に1度しか回ってこない。華やかで、贅を尽くした祭りを毎年毎年行なっていたら、身上身代をつぶしてしまう。よく考えている。
だが、7年ごとである。録音、録画もない時代だ。それも文盲率も高かった時代である。そこで、その継承について考えてみたい。
この「お宮日」では、町の人は世代ごとに役割を体験していく。幼い時は母に手を引かれて先曳。10歳前後になるとドラ、太鼓叩き、船頭など。それから、10代後半から30代後半の者が根曳衆として出し物を練る。これは2回ほど体験するようである。そして壮年期になると采振りとして根曳衆を取りまとめ、その後、町の長になると、紋付き袴で、出し物が町々を練り歩く先頭に立ち、神前に向かう。
こうしてみると、7年ごとのこの全ての役回りを経験し、それを総合的に伝えられる者(総合プロデューサー)は、50代半ばから60代の世代である。古くから、70歳を古希と言う。古代希だったわけだ。そうなると、近代医学が今日のように発達する以前に、各町内に50代半ば過ぎの町民がそれほど多く健在であったとは思えない。だから、彼らの存在は貴重なものであった。過去の祭りごとを全て経験し、その段取りを熟知し、仕切れるのは彼らであった。つまり、彼らが、健在でなければ町は出し物をだせなかったに違いない。また、他にも町内の様々な仕来たりにも、欠かせなかったはずである。そんな中で敬老精神が生まれたのは容易に理解できる。今日の社会も「サザエさん一家」程度の交代の繰り返しが無難なのかもしれない。
そうなると、100歳越えの方々の所在不明も、そんな世代交代のルールが、今日の社会では些か通用しなくなった、と考えてみたら、それほど大騒ぎすることでもなさそうである。少し、この"安全・快適・便利"な社会が行き過ぎただけのことではないだろうか。

私も還暦を過ぎて古希を迎える折り返しにかかろうとしている。古代希な変人と言われぬうちに、ぼちぼち人生の店じまいを...と思うのだが...。
シェンキェヴィチは「死の事は考えるに及ばない。我々が手伝わなくても、死は我々の事を考えてくれるから」と。...これは、最近話題の長崎県での余計な予算の垂れ流しで行なわれている「自殺予防対策」の、金のかからぬお手軽な標語にもなるような気がするのだが...。


【クライトメートゲート事件】
今日話題の地球温暖化を二酸化炭素排出が原因として、世界中でCO2の排出規制を呼びかけているIPCC(気候変動に関する政府間パネル) が、その論拠となった基礎データを捏造していたことが2009年に露見した。これは欧米ではとても大問題となっているが、日本ではほとんど報じられていない。