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長崎県知事よりの返事

19

(月)

09月

エッセイ

知事、こんな稚劣な返事では困ります。

(1)長崎県知事からの手紙

法人志仁会西脇病院
理事長 西脇 健三郎 様

先日はお手紙をちょうだいしていたにもかかわらず、海外出張等が重なり、返事が遅くなってしまいましたことをお詫び申し上げます。
さて、県への投書(メール)についての取扱い、医療に関するお尋ねについてお答えいたします。
今回の投書については、その内容に鑑み、県の所管課である医療政策課の判断により、医療監視を所管する長崎市保健所に情報提供したものであり、長崎市においては、医療法第25条第1項の規定に基づき、独自の判断で貴院への立入調査を実施したものであります。
県においても、保健所を設置する長崎市、佐世保市以外の地域については県立保健所により立入調査を実施しておりますが、投書に基づいて実施した事例もあります。投書内容に医療法等違反が疑われる具体的な記載があれば、その事実確認をするために立入調査が必要と判断する場合もあります。医療安全を確保するための手続きであることをご理解いただきたいと存じます。
また、投書の全面公開をということですが、県でも長崎市と同様に情報公開条例がありますので、同条例第7条第1号の規定による個人情報保護の観点から全面公開は困難であると考えており、併せご理解いただきますようお願いいたします。
さて、日頃から、精神医療の確保にご尽力を賜っておりますが、県では医療法に基づき医療計画を策定し、いわゆる4疾病5事業を中心に医療連携体制構築を図る中、今般、国において精神疾患がその4疾病に追加されることとなりました。今後、県として国の指針に基づき、必要な医療機能の明確化や各医療機関等の機能分担・連携を推進するための方策を医療計画に盛り込んでいくこととなります。県の医療行政に対し引き続きご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。

平成23年9月9日
長崎県知事 中村 法道(知事公印)


(2)私より知事への再度の手紙

長崎県知事殿

前略
 長崎県全域を司り、かつ「人の痛み、思いを敏感に捉えて...県政」と言っておられる知事にしては、何と稚劣な内容のご返事だろうか?
あきれるばかりである。
早速、平成23年9月14日、差出先の医療政策課の園田氏にお電話を差し上げ、「独自の判断の内容を知りたくて、あれだけの資料を準備し、知事に手紙したのに、その独自の判断に至った経緯を報告していただきたい」と問い正したところ、「そうですね」と県職員である園田氏は県知事の回答内容の稚劣さを率直に肯定された。その通りである。前回の手紙に資料を添付しており、周知のことと思われるが、「医療法25条第1項の規定に基づく立ち入り監査の実地について」は厚生労働省より、すでに各都道府県、各政令都市に対して技術的な助言として通知されている。その中で、"住民等から提供された情報に対する対応について"では「...学識経験者の団体等に相談し、速やかに事実確認を行う...」としている。
したがって、「独自の判断」に至った経緯を説明する責任があるのは当然である。
さすが知事は、園田氏という、いい部下をお持ちである。
そして、県立保健所が過去に投書で問題ある体質の病院に立入調査を行ったのは、私も関係者等から聞き、承知している。その時でさえ、前の手紙でも述べてように、たった一枚の200字余りの匿名のメールで"独自の判断"をしてはおられない。県の関係者の方々は、ずい分ご苦労なさった、と伺っている。
さらに、園田氏は個人情報の開示に関しては、「犯罪の捜査においては公開」とおっしゃった。しかし、個人情報保護法の開示の決定は、開示が必要と認められたら、裁判所の命令でも可能である。これだけ手続きの不備があれば、当方から何らかの申し立てを司法に行えば可能なはずだ。

また、最後の精神科医療計画に関しては、2011年1月に医療政策課の要請により、私のパブリックコメントを文書にして提出している。さらに、日本精神科病院から毎月発行され、各都道府県の福祉保健部にも送られているはずの「日本精神科病院協会誌」4月号に依頼投稿している私の論文「重度アルコール依存症入院医療加算から見えてくるもの」も、国立の精神科研究機関では、今後の5大疾病に入った精神科疾患の対策を立てる上で参考になる、と評価もいただいている。
あの稚劣なお手紙をお書きの知事には、あまり理解できないであろうが別刷を添付、お送りしておく。

さらに、長崎県は過去、精神科医療に関して、たびたび過ちを犯している。
その中で、口頭等の謝罪はたびたび受けているが、文書としても、2度行われている。
① 昭和60年、当時の長崎県保健部長は、当院に対して、警察官が行った行為が医師法・第4章・第17条【医師でなければ、医業をなしてはならない】に反しているのでは、といった問い合わせを、実に20数年も無視してきた。そして、平成19年になって、やっと文書で謝罪している。
② 長崎県精神医療審査会は、書類記載の定型文化へ執拗にこだわり、臨床現場から「精神保健福祉法」に基づく入院届けについて、書類上で選択病状に関して重大な不備があることを指摘しても、吟味することもなく無視、厚労省より私の指摘通りの訂正がなされた書式が発行された後、再度、その説明を求めた。そこで初めて、釈明、謝罪の文書をよこしてきた。

また、過去の県議会で精神障碍者の長期入院者をヘドロと表現している議事録がある。
これは、最近のブログで紹介した県教育長の幻の心療内科医を登場させ、精神科医を蔑視したことに通じるところがある。
(注:このような詳細資料は、前の「知事への手紙」の時も、今回も添付し、知事に親展でお送りしている)

このようなことから、長崎県の精神科医療対策の歪んだ体質は延々と続いていると判断できる。
よって、5大疾病となった精神科疾患への長崎の精神科医療計画については、知事からの手紙にある「協力」をするのではなく、まず、その案を作成いただき、当方がチェックし、修正させていただくことにしたい。場合によっては全面修正も必要であろう。

草々

                   平成23年9月16日
                    西脇病院
                      理事長 西脇 健三郎

(3)確認事項
 当院は、先にふれたように実名で、公的機関に医師法違反、および患者の人権を左右する公文書の不備について、問い合わせを行った。しかし、行政よりの回答は一つに関してはその謝罪を得るのに20数年の時が必要であった。また、もう一つは、厚生労働省がその不備を修正後も回答をいただけず、再度、問い合わせて、やっと釈明・謝罪の回答があった。さらに、医療政策課より要請の「パブリックコメント」の提出。そしてまた、障害福祉課より「障害者差別にあたると思われる事例募集」についても、障害福祉課の指定基準に従って事例投稿を行った。これまた、何れも、受理、ないしは不受理の回答すらいただいていない。他にも口頭での問いかけを多く行っているが、その回答はほとんど行われていない。
つまり、長崎県、並びに長崎市行政当局は、実名より匿名による問い合わせなどを重視することが、今回の件で判明した。
当院としては、今後、この件の決着が付くまで、長崎県、並びに長崎市行政当局の監督、指導には応じるつもりはない。
その時の当局への通知は、「匿名でお願いします。......助けて下さい」でいいのだろうが、それは、メールで行うべきか、手紙で行うべきか、確認したい。
とはいっても行政当局は、「独自の判断」として、あたかも正義のごとく監督、指導を行うであろう。それ、即ち"ファシズム"である。

追記:この内容は、表現の自由として、当方のブログなどに掲載させていただく

*「パブリックコメント」に関しては、西脇病院ホームページ院長ブログ2011年2月14日「一精神科医としての長崎への想い...」に、そして「障害者差別にあたると思われる事例募集」についても、同ホームページ院長ブログ2011年2月7日「夢のまた夢!その続き」に詳細を掲載している。