住みやすい県

15

(火)

11月

エッセイ

長崎県知事
中村 法道 殿
 
住みやすい県

今年の「住みやすい県」日本一は、福井県だった。私にはほとんどなじみのない県だ。大学時代、席次が近くて実習などでずいぶんお世話になった女医の卵だったN君が、福井に嫁いでA先生になった。彼女は数年前にご主人を亡くし、二人の娘さんは巣立って久しい。そして、今、彼女は一人で福井の地で皮膚科を開業している。年に数回、電話、メールのやり取りをしているが、最近、少し寂しそうだ。でも、今回の福井県が住みやすい県の日本一になったことで、彼女を思い出し、何かしらホッとした。

では、長崎はどうだろうか?
そこでまた、匿名メールのシリーズに戻ろう。

何度もふれてきたことである。2011年5月17日、早田篤長崎市保健所所長名の「医療法25条第1項の規定」により抜き打ちの立ち入り調査が行われた。理由は、当院の医療安全に関して、長崎県に匿名の投書が寄せられ、その内容は、当院の医療安全に関することである、と。しかし、投書者の権利を守るため、それ以外は何も教えてもらえなかった。監査結果、当院に何の落度もないことが判明した。当然、その投書は虚偽であり、当院に何らかの損害を与えようとしたものであることは明らかである。そこで当院の事務部長が匿名の投書の公開を求めた。
社会常識的に言えば、今度はこちらが被害者である。「知る権利」が発生したわけだ。しかし、立ち入り調査に入った長崎市保健所医療統計課奥野係長は、個人情報保護法を盾に頑として、情報の公開を拒んだ。その後も何度となく、県知事宛に手紙を出しているが、まともな回答がない。市長宛に堤出している書面、拙著もお送りしているが、受け取りの通知もない。やはり、匿名重視なのだ。だが、ちょっと待ってくれ。病院内部に何らかの損害を与える人物が存在し、その人物が虚偽のメールを公的機関に流し、それを理由に直ちに調査が行われても、実名は公表されない、咎められないと、それを何回も繰り返してもいいわけだ。それでは医療機関は患者診療どころでない、毎回その対策にてんてこ舞いである。いい医療の提供などできなくなる。質の高いしっかりとした医療を求めて毎年、定期的に監査に入られるのはどちらだったかな?
こんなに突然、一通の匿名のそれも内容の希薄なメール(憶測だが...)で抜き打ちで監査に入られてはいい医療、質の高いしっかりとした医療を提供するどころか、お役所の顔色をうかがいながらの医療になってしまう。

多分、当院内部の通報者だが、それも退職者だろう。何となれば、メールの受信元、医療機関を管轄する病院政策課、あるいは精神科病院に関わりの深い障害福祉課にすらほとんど接触がない監査指導課なのか。それは、彼の背景に現在の長崎県福祉保健担当の幹部職員と親密な関係があり、かつ、県内ではそれなりに影響力を持つ指南役・相談役と交流のある人物であろう。
そうでもしない限り匿名のメール一通だけで、何の協議もなく、議事録、稟議書も作成しないまま、法を行使できるわけがない。

これが長崎の行政サービスである。悪しきを助け、弱きを挫く... これでは日本で一番住みにくい県は長崎県と言うことになる。
草々
                       
平成23年11月15日
西脇病院 理事長
西脇 健三郎