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エッセイ

東京電力の福島原子力発電所の吉田昌郎所長が体調不調から12月1日付で退任した。病名など詳細が、当初公表されなかったので、メディアは放射能被爆を匂わせる報じ方をしていたように私は感じた。しかし、12月9日、東京電力が被爆と無関係、食道癌であると発表すると途端にメディアの関心は薄れたようだ。
ただ、食道癌についてだが、適量飲酒者、あるいは非飲酒者に比べ多量飲酒者の発病率は100倍近くに達すると指摘されている。

吉田前所長がどのような人柄で、酒とどう付き合ってこられたか、私は知らない。ここからは、あくまでも私の勝手な推測、推理である。
地震、そして津波に襲われ福島原子力発電所は、機能不全状態に陥った。その現場の最高責任者である吉田氏は、その日から、次々に発生する難題に立ち向かい、それこそ手探りで対応・対処してこられた、と報じられてきた。時には会社の上層部の指示、いや国の意向も無視した決断も行ったとも...。そんな彼は元来、使命感が強く、豪快ではあるが、繊細な人柄ではなかったろうか。そして、そんな人物で、かつ愛飲酒家であったとすれば、一息入れる時には酒量が増していたに違いない。だからこそ、あの原発をあそこまでに何とか食い止めてきた、と推測したい。

彼の病、食道癌は潜伏期間が5年間で、今回の原発事故対策とは関連がないとも東京電力が発表、それをメディアも追随して報じている。
ただ、2011年3月11日からこの9か月余りに及ぶ期間、吉田前所長に襲いかかった重圧、ストレスに耐えるために酒量が増し食道癌の発症を早めた、と推理するのは、アルコール医療に携わる一精神科医の考え過ぎかもしれないのだが...。

この他にもメディアは何となく報じている。ある朝のワイドショーでは街を津波で失い自らも避難所暮らしをしながら、他の避難所を巡り市民の声に耳を傾ける市会議員が、これまで毎晩お酒を飲むことはなかったが...今、毎晩飲酒している」と。さらに、行方不明者の遺体収容(他者の変死の目撃)を連日、繰り返し行ってきた自衛隊員、警察官、消防士の諸君が地元に戻った後の、PTSD(悪夢、フラッシュバック)とそれを癒そうと増える飲酒量、そこから生じることが充分予測されるアルコール関連問題が気がかりである。

多くの被災者の方々もだが、吉田前所長、市民の安否を気遣いながら酒量の増した市会議員、そして、自衛隊員、警察官、消防士の諸君、これからの震災の復興、日本の再建に不可欠な人材である。それが、第一線を離脱されるようでは困る。そういった観点からも真に実効ある「心のケア」対策が望まれる。そういった意味で、吉田前所長の退任が被爆の影響でなくとも、もう少し考えてみてもいいのではないだろうか。