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また匿名ですか

26

(月)

11月

エッセイ

約190億円の巨費を投じて長崎市民病院が新築されることになった。これまでの累積赤字、今回の巨額な建築費からか、長崎市から切り離し、地方独立行政法人の病院機構となった。
そこまではいい。病院機構になったからかどうなのか、病院名を新たにするとのことだ。それも懸賞金付きの公募だそうである。市民病院ってネーミングはそんなにイメージが悪いのかな? 市立であろうが独立行政法人に変わろうが、市民の病院といった自負心を持って長崎市民の健康を守ってほしい。だから「長崎市民病院」でいいではないか。

そんな中、その懸賞金に「匿名」で100万円の寄付がなされた。
長崎は県も市も「実名」よりも「匿名」を尊重する地である。何の疑問もなく、その100万円も懸賞金に加えられた。巷では、その100万円の出所と懸賞金の行先(当選者)のことで色々な噂、憶測が飛び交っている様である。 

少し話は遡るが、多分、20世紀末(1998年)に全国で最初に、公的機関として「精神科」への受診を容易にといった意味合いから、「心療内科」に標榜がえしたのが長崎市民病院だった。その後、長崎県内でも雨後の竹の子の様に精神科医が標榜する心療内科クリニックが開業した。確かに心を病む方々が気軽に受診、治療を受けられる様になったことは喜ばしい。しかし、一方で副作用も数々生じている。その件に関しては、私はこれまでのブログでずい分と語ってきた。どうだろう、新たなネーミングに多額の懸賞金を準備するほどの資金があるのなら、「心療内科」標榜の先鞭をとった公的機関としての責務として、その副作用に関する検討会なり、協議会なりを立ち上げたらどうだろうか。
私が、今思いつくメンバーとしては、県、市の精神保健担当者、一般医療機関の救急部、長崎市消防庁の救急隊、精神科病院(協会)・精神科診療所(協会)の面々がなかには喜んで参加されるであろう。病院名は、今まで通り馴染みの長崎市民病院でいいではないか。


そうそう、匿名好きの長崎の保健行政の件、当方の10月出版の拙書「65歳の戦~生業は精神科医~」が『財界九州』12月号で図書紹介された。以下その内容である。第1章の匿名のメールに関する紹介に終始している。

『...が事の起こりは2011年5月16日、同市保健所から同院に送られた1通のファックス。同日に県に寄せられた同院の「医療安全」に関する匿名投書メールに対し、保健所が「医療法25条」(病院の適正管理確保のための調査)に基づく立ち入り調査を17日に行う通知だった。調査は行われたが「適正」で予定時間より早く終了。投書内容や同市・県の対応を不審に思った西脇理事長・院長が同市・県に情報公開を求めたところ約200字のメールを一部公開。「個人情報の観点から全文公開は困難」との返事だった。一般に保健行政では匿名投書には対応せず、信憑性が高く患者の生命・人権が侵される危険性がある場合に限り慎重な調査・協議の上、対応する、という。監査の結果、メールは虚偽だったことが判明したが同市・県からはいまだ釈明もない。「47年、日本国憲法施行の年に生まれ、民主主義の発展と共に成長してきた」著者が行政の理不尽に"物申す"。白・黒・赤3色のみ使い静的な印象のカバーデザイン。それが、この熾烈(しれつ)な主張とコントラストをなす。』と。

また、11月29日(木曜日)には、地元新聞の一面の下段にかなりの紙面を割いてこの本(「65歳の戦~生業は精神科医~」)の広告を掲載していただくことになった。これも、地元新聞一面下段に地元図書の広告は異例のことのようだ(出版社は東京だが...)。

匿名もいいけれど、匿名を悪用されてはたまったものではない。
善意の2人の首長(今回はお一人のみ)は、そこのところがよくお分かりでない様だ。
「見て見ぬ振り」はまだまだ続いている。