ケモノ道

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02月

エッセイ

2013年2月8日、長崎市内で、グループホームの火災が発生、4名の方が亡くなった。長崎県では2006年にも大村市で同様の火災が発生し多くの死者がでている。
以前に同じようなグループホーム火災が県内でおきているにもかかわらず、今回の火災発生については、メデイァの報道を見る限り、行政のこれまでの監査、指導のあり方に対する批判が多い。このような災害では異例といってもいいほどだ...。
幾つか紹介しておこう。

【2013年2月15日 長崎新聞:
長崎市は14日、ホームを2010年4月に緊急点検した際に、窓など排気設備の建築基準法違反を見落としていたことを明らかにした。(この緊急点検は2010年3月の札幌市グループホーム火災を受け国土交通省の要請で実施している。)】

【2013年2月17日 読売新聞:
長崎県が2003年8月、同施設が入居する建築物が建築基準法に違反していることを見落としたまま、開設を認可していたことがわかった。
施設運営会社は2003年7月、県に開設を申請した際、...4階建て...3階建てと記録した書類を提出。
市建築指導課も1988年に違法な増築を確認していたが、県には伝わっていなかった。
長崎県長寿社会課は「介護保険法には対火建築物に関する規定はない。建築基準法は所管外のため、確認が必要とは思わなかった」と説明している。】

などなど、各紙に細かく目を通すと、あきれるばかりの行政当局のずさんさが目に余る。


私は、今回の件で、こんなずさんな行政当局が、2011年5月17日、県と市の関係機関があの「薄っぺらな匿名のメール」1通で、何ら協議することなく、迅速に「医療法25条」に基づいて、当院に監査に入られたことを思い起こしている。
あの時、行政の動きとしては「薄っぺらな匿名のメール」1通の情報だけを所轄内の問題として取り上げるのはおかしい。そんな暇があるのなら、今度のようなグループホームのように改善を指導した施設に、改善されたかどうか足を運ぶべきだ。

匿名のメールが虚偽であったことに対して長崎のお役人は、「個人情報保護法」(本当は公益通報者保護法なのだが...アホな長崎の役人はそれも知らなかったらしい)を盾に回答を拒んできた。先に述べたように本来、匿名のメールたった1通で、それも、これまで私が管理者になって以来の30数年、年1回の定期監査で何ら重大な指摘、改善指導もなかったところに踏み込む暇があったら、繰り返しになるが、改善の必要のある施設に足繁く通い、諸事情で改善がすすんでいないようなら、施設管理者ともに知恵を出し合うぐらいのことができなかったのだろうか。その後、当方は再三にわたり長崎県知事、長崎市長にこの「虚偽の匿名メール」に関して釈明を求めてきたが何ら返答がない。この詳細については、これまでのブログにも紹介しているが、拙書「65歳の戦―生業は精神科医-」(みずほ出版新社)の第一章でまとめて掲載している。


とにかく全てが上から目線である。2人の首長を頭とする公人は日ごろ何をやっているのだ、と言いたくなる。決して全ての長崎の公人を批判しているわけではない。よりよい仕事を、と志を共にしている方々も数多くいる。
そんな方々には心苦しい内容だが、拙書「65歳の戦―生業は精神科医-」を読まれた読者から、次のようなお手紙をいただいた。その一部を紹介したい。

「権力のパワハラは、中国の「愛国無罪」が象徴的で、「役人無罪」でずっと来ています。...中略... あなたは「人間の魂」として戦われていますが、相手は「ケモノ」の域で人生しています。ケモノは、所詮、ケモノ。力では脆弱な人間はやられてしまいます。」


そうだね。人間の行うことは、決して十全ではない。過ちも犯すだろうし、愚かさを露呈するものである。しかし、少しは「人間の魂」をもって、ことにあたってほしいものだ。

今の長崎の多くの公人の行いは、ずさんなケモノとしか言いようがない。それを見て見ぬふりをしている首長(あなたもケモノ)、今年は「平和宣言文」はお読みにならないだろう。
確か、昨年の夏、その平和宣言文作成委員のお一人である土山 秀夫氏は、若者に対して「社会の矛盾には声を上げよう」と言っておられたよね。