プレスリリース

プレスリリースのご紹介

マスコミを受け入れるということ(6)

書籍・雑誌

2009/03/10(火)

日本精神科病院協会雑誌別刷(2008 Vol.27 No.4)
偏見とマスコミ

精神科病院、精神障害の偏見をなくすために多くの努力が払われている。ただ、「社会復帰、開放化」「アンチスティグマ」を唱え、一方では患者の知人ですら面会で病棟に容易に出入りできそうもない閉鎖的な病院で診療をされている、良識派を標榜される精神科医も存じ上げている。これだけはいただけない。やはりすべてを見せることが重要である。

なぜなら、一般市民の精神科病院、精神障害者に対する偏見、差別の要因にはいろいろあるだろうが、私が思うにその大きな要因は2つだと思う。1つは精神科病院の中で何がなされているかわからない。もう1つは急性期の興奮の激しい患者に対する恐れ、恐怖感である。確かに後者は、私でも症状の激しい、とくに新規患者の診察にあたるときは、一種の緊張感を持つのが常である。だから、症状が厳しく、興奮の著しい患者を、精神科病院のどこで、どのように処遇(必要なら隔離室でも...)するのかをすべて知らしめることが大切なのである。なぜなら、偏見、差別の元凶である病態の時期はどうしているかを、つまり適切、適正に入院処遇を行っていることを知らしめることは、一般市民の安心と理解に寄与することになる。また、それが適切、適正なものであることを知ることは、治療を受ける立場のやはり一般市民に対して、安心をもたらし、要らぬ不安を取り除くことになる。

そのためには、現在精神科病院を利用している患者のプライバシーを配慮したうえで、マスコミに精神科病院へ入ってきてもらい、急性期の処遇も含めた精神科病院のソフトとハードのすべてについてマスコミをとおして伝えてもらうことは、精神科病院、ならびに精神障害者への偏見、差別の排除の一助となり、精神医療の現場の理解につながると信じているからである。

このようにマスコミ関係者の出入りが多くなると、当院の場合、最近では病院職員は患者のプライバシーに配慮してもらうことを強調しながら、彼らに対して、一般の病院見学者と変わりのない応対をしてくれている。また、患者自身も顔のぼかし、モザイクなしで出演することを快く応じてくれる方が増えてきた。

そして、それは昨年末のことであったが、自らが地域で絵画作品の個展を開催し、それがまず地元の新聞で取り上げられ、その経緯の中で今度は地元のテレビ局から、病室で行っている作品の制作風景を取材させてほしいと依頼を受けたからと、患者本人より病院側に取材許可の申し出があった。
もちろん許可したが・・・。拒むより慣れろである。変化ではなく、日常になったのかもしれない。

終わりに

今日の現代社会ではマスコミの与える影響はよくも悪くも大きい。幸い私はいまのところマスコミと良好な関係を保っている。ただマスコミとこれからも一貫して良好な関係を保ち続けるとはかぎらない。一昨年だったか「もったいない」が国際語になったことを私たちに伝えたのはマスコミであった。

しかし昨年、健康被害がまったく出ていないにもかかわらず、賞味期限の改ざんを行った多くの食の業者の存在を大きく報じたものマスコミである。
私の携帯電話には、地元ばかりか中央のマスコミ関係者(そのほとんどが記者)の携帯電話の番号を登録されている。当然、先方も私の携帯電話の番号を登録しているはずである。もし、私の病院で不祥事が発生したら、私の携帯電話は、そういった関係者からの問い合わせの電話で鳴りっぱなしになるに違いない。まぁ~、マスコミとのお付き合いには、ハイリスク・ハイリターンとの覚悟しておくことである。

ただ、そんな緊張感が病院の医療サービスの質の向上に寄与してくれるのであれば、マスコミとの関係は有益である、といっていいだろう。