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  4. 今度は必ず、異例の速さと独自の判断でしなければならなかったこと

エッセイ

2014年(平成26年)7月26日、長崎県佐世保市でおきた県立高校女子生徒殺害事件について、多くを語ろうとは思わない。
ただ、2014年(平成26年)6月10日、佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)へ加害者を診察している精神科医より、加害者の問題行動をあげ、「この子は危ない。人を殺しかねない」との通報があったと、2014年(平成26年)8月1日に一斉に報道がなされた。しかし、その精神科医は、自分の名前は名乗ったが、少女の氏名や住所、高校名などの情報は伝えなかったという。それに対して、県こども家庭課は「必要な場合は関係機関と連携するが、どこの誰かがわからなければ情報提供のしようがない」と説明、と8月1日の朝日新聞は報じている。

そうだろうか。以下、長崎県当局の県民の生命に関する対応について、過去の2つの事例を紹介したい。

これはかなり以前のことではあるが、長崎県の教育長の対応である。
『1996年(平成8年)2月、長崎県教育委員会が設置した"親子ホットライン"に一人の女生徒から自殺をほのめかす電話があり、県教委は緊急アピールと、該当する女生徒探しを行った。そんな出来事からしばらくして、この県教委の"親子ホットライン"のスタートを「...全国教育長会議で他県の状況を聞いた当時の教育長が、設置を指示して十日後。異例の速さで、」と、その対応の素早さを評価する記者のコラムが地元新聞に掲載された。そのコラムの中で、自殺予告の女生徒の電話相談について次のようにふれている。「...苦しい胸のうちを吐き出して落ち着いたのか、最悪の事態は回避されたようだ...」と』。この時の電話の女子生徒は、どこの誰だかわかっていなかったが、とにかく異例の速さで、県内全ての女子生徒に聞き取りを行っている。

2番目の事例は、当院に対して、県当局が2011年(平成23年)5月に行っている。このことについては、当院ホームページの私のブログ、あるいは私の劣書【65歳の戦】をお読みの方は、ご存じであろう。
2011年(平成23年)5月、長崎県福祉保健部監査指導課に届いた短文の「匿名のメール」一通のみで、何の協議・検討、確認ための調査も行われることなく、当院の所轄の長崎市地域保健課から長崎市保健所に、その匿名のメールはおろされている。そして、そこでも何ら検証等されることなく、2011年(平成23年)5月16日長崎市保健所よりFAXにて長崎市保健所所長名で「長崎県の医療相談窓口に貴病院の医療安全に関しての投書が寄せられた。よって翌5月17日、立入調査を行う」との旨の通知があった。つまり、医療法25条第1項の規定に基づく立ち入り監査である。もちろん、翌日3名の市の職員らしき人物が来訪、監査らしきことが行われた。そして、その翌日には書面で、当院おいては安全管理に関する問題はないとの回答を長崎市より受け取った。通常、医療法25条第1項の規定に基づく定期監査は年に1回、各医療機関に対して実施される。このような抜き打ちで行われる監査は、患者の生命・人権が侵されている危険がある、と判断された場合である。
この監査について、以後3年以上にわたって、その説明、釈明を求めてきているが無視され続け、行政当局は、独自の判断で行ったと主張するのみである。
この件で、私も、また当院に勤務する職員も疲弊し、消耗、傷付いている。さらに、当方が再三にわたり問いかけを行うためか、「西脇病院は色んな所に楯突く病院...」といった噂が関係機関、取引先の間でまことしやかに囁かれている。風評被害である。

最初の事例も、県教育委員会(当時の教育長)の独自の判断で、県内の全女子生徒に一斉に聞き取りを行っている。かなりの女子生徒は、教育者側の行為に傷ついたに違いない。とくに当事者は、自分のかけた電話で、同じ世代の女性に迷惑をかけてしまったことを悔やみ、その後の人生に何らかの暗い影を落としているはずだ。

このように生命に関することについては、長崎県当局は独自の判断で、現長崎県知事がお好きなコンプライアンスを無視して対応を行ってきている。

では何故、専門職である精神科医の通報を受けて、今回も異例の速さで、独自の判断において一歩踏み込んだアクションをおこさなかったか。
こうして、これまでの事例における長崎県の対応と今回の事前情報処理の在り方を比べてみると、今度の県立高校女子生徒殺害事件ついては、異例の速さで、かつ独自の判断で対応しなければならなかったはずである。長崎県こども家庭課の「必要な場合は関係機関と連携するが、どこの誰かがわからなければ情報提供のしようがない」では納得できない。
この事件に対する長崎県知事をはじめとする長崎県当局の責任について明らかにしてほしいものだ。