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  4. 電気が足りない、そして節電

エッセイ

2011年3月19日18時50分長崎発、全日空678便はほぼ定刻(20時40分)に羽田空港へ着陸した。長崎での仕事を終えて東京に出かけるのには都合のいい便である。これまでよく利用してきた。しかし、今回は、これまでと違って一週間前の東日本大震災後の東京入りである。もちろん、計画停電が実施されているのは知っていた。だから、都心への交通機関の乱れ、混雑は覚悟していた。到着した羽田空港は照明が落としてあり薄暗い。何か上京したという気がしない。そして、気がかりだった都心までの交通機関は予想に反して空いていた。意外だった。

渋谷の定宿(ホテル)にチェクインしたのは、22時少し前だ。なじみのホテルマンから、レストラン、ラウンジは全て22時で閉店であることを伝えられた。連休中にも関わらずキャンセルが出たのだろう、ネット予約より2ランク上の部屋を準備してくれた。部屋の窓からの何時もの東京の夜景が広がっていた。本来、22時の東京は宵の口である。だが、新宿の副都心、東京タワー、六本木ヒルズと何れも、羽田空港同様にライトが落としてあり、ホテルの下の国道246、そして、その上、同方向に伸びている都市高速の車の流れも少ない。もう東京は深い眠りに入っているようだった。こんな東京は初めてだ。こうして節電に協力することで、その後の計画停電は回避できているようである。だが、直観的に"これでは日本が危ない"と。そして、さらに今、政府は夏場の節電を呼びかけている。


これまでも節電はしばしば話題になってきていた。しかし、今回はこれまでと趣が些か異なる。これまでの節電の呼びかけは、概ねEcoだ。自然環境保護、地球を守る、というのが名目であった。だが、今回はそうではない。その守るべき地球?がほんのわずか身震いしただけで、今度の甚大な大災害である。
震災の被害を辛くも軽微でまぬがれた日本の中枢である東京と、その周辺が電力不足、エネルギー危機に陥っている。あわててこれまでEcoに反するとして停止していた火力発電所を再稼働すべく、そのメンテナンスに躍起になっていると聞く。日本は世界でエネルギー消費効率が最もいい国である。誇るべき省エネ大国だったのだ。そんな日本国の首相が2009年9月、国連においてCO2を25%削減なんてことを演説されている。おかしなことをおっしゃる方だと思っていた。その元首相のこの震災におけるコメントは未だに伺えない。
しかし、国の方針はその25%削減目標をどうも取り下げたようだ。宣言しなくてもいいことを宣言して、今度はそれを取り下げるのだから、国際世界に対して恥っさらしなことである。今回の節電は、むしろそんな省エネ大国の根幹を揺さぶりかねない事態である。そんな日本の経済活動を何とか維持し、加えて、私たちの日常生活、いや生存を図るための必死の試みである。

環境保護を訴えてこられた方々、「地球が危ない...」、「地球が壊れる...」、「愛は地球を救う...」、そしてCO2環境破壊説はもういいではないか。近年の地球の環境変化、最近の大地震の多発は太陽の磁場、黒点の影響だという説もある。これは、人類の英知のおよぶものではない。

だが今、東日本にあった世界のトップレベルの精密機器の企業がこの大震災でかなりのダメージを受けているようだ。それに加え、この節電が追い打ちをかけ、これから先の数年、日本経済はかなりの危機的状況に陥っていくのは間違いない。さらに、この大震災で私たちの情報の片隅に押しやられている、リビアを始めとする中東の産油国の政情の不安定さ、さらにギリシャ、アイルランドに続くポルトガルの金融危機によるEUの経済問題、それが今度の震災での技術大国日本の停滞と相まって、どのように世界経済に影響をおよぼすのだろうか。そして、それがこれからの私たちの生活をどの程度脅かすかが気がかりである。その気がかりが、かなり深刻な現実になった時、これまでEcoを唱えてこられた方々は真っ先を切って、原始時代の生活を送っていただき、Eco生活の実践を示してほしいものである。
そうしていただかないと、次に控えている2050年問題、つまり世界の総人口100億人到来は乗り越えられない。その頃には今のエネルギー問題のみではなく、食料、水不足が国際的な問題になると指摘されている。

考え方だが、いいではないか。定かではないが、6500万年ほど前にたかだか10キロ程度の隕石が地球に突き刺さり、恐竜が絶滅した。そのおかげで、哺乳類が繁殖し、その結果、人類が地球を制覇した、といわれている。しかし、その隕石の衝突で地球自体はビクともしなかった。壊れなかった。それなら今、人類の存続の危機が迫っているのであれば、次の時代はどんな生命体が地球を支配するのか考えてみるのも一興かもしれない。ただ、そうなるのを少しでも先延ばしにしたいのなら、「愛は地球を救う」なんて、私たち人類のおごりたかぶった格言は、ぼちぼち止めることにしようではないか!そして、地球規模の人口抑制がCO2削減より優先して取り組む課題のように思えるのだが...、如何かな??

おっと、それよりも当面は、まず東日本の復旧と復興、それに変な自粛ムードで日本全体が活力を失わないようにしなければいけない。そうなると西日本、「ガンバレ!」だな...。