行政改革

31

(火)

01月

エッセイ

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長保地保第820号 平成24年1月6日
(医)志仁会 西脇病院 管理者様        
長崎市保健所 早田 篤
   平成23年度医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について 貴施設にかかわる立入検査を次のとおり実施しますので、当該立入検査が効果的に遂行できますよう、帳簿の準備及び各部門担当者の立会等ご配慮をお願いいたします。 1、平成24年1月25日(水)午後1時30分から午後4時30分頃 2、実施方法(以下略)
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これは、2012年(平成24年)1月6日付けで郵送されてきた、毎年、長崎市保健所が定例で実施する医療監査(各医療機関が適正、適切に診療、医療行為、及び施設の保全、安全を保っているかを保健所職員がその病院に立入、患者カルテ等の関係書類をチェックし、病院巡視を行うこと)の通知である。実施日は1月25日。実施方法(内容)は多岐にわたるのでこのブログでは省略した。
ただ通年は前年の12月に行われるのが常だが、今回は年を越して1月だ。さらに2011年(平成23年5月17日)に何かよくわけの分からない同じ医療法25条第1項に基づく抜き打ちの監査も行われているので、今年度は2回目である。私はこの通知を見てうんざりした。長年、毎年のこの定例監査では、ほとんど改善の指摘、指導も受けてない。いわゆる適マークをいただき続けている。帳簿等の整備は通常行っていることだし、多くは電子カルテ化しており閲覧していただくのは構わない。ただ、担当職員の立会は、当日の患者への医療サービスの低下につながりかねない。そこで、監査に来られる長崎市保健所の方々にお叱りを受けるのを覚悟で、必要帳簿と監査用に準備した電子カルテを配置した部屋に以下の三枚のメモ紙を入口のテーブルに置いて、当院職員には通常の業務を指示した。

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長保地保第820号 の立入検査実施担当者の方へ
監査ご苦労様です。 平成23年5月17日の貴所の「医療法25条の1」に基づく特別監査における経緯、並びにその後の長崎県、長崎市の保健医療当局の反応に従い対応させていただきます。 ①:当局は独自の判断、裁量で監査を実施下さい。当院は昨年より電子カルテになっております。パスワードを提示しておきます。独自に電子カルテを操作の上、必要箇所を監査ください。 ②:当局の匿名重視、実名無視の方針を受けて、全職員実名、肩書では対応いたしかねます。匿名にてお呼びいただきご指示ください。 以下:①、②の根拠となる書類、及び関連資料も堤出しておきます。宜しくお願い致します。
西脇病院代表者 花菱アチャコ
長崎市保健所 立入者用 電子カルテID・パスワード
ID  :4**1
パスワード :********
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長保地保第820号の立入検査実施 担当者の方へ
お疲れ様です。お昼休みはおすませでしょうか? 当院は医療機関であるため、かなり以前より、患者さんへの適時給食を行政よりの指導で行っています。よって、職員の昼休みは労基法に基づき13時より14時までとしております。しかし、13時30分監査開始と通知をいただいておりますので、どうぞお構いなく、電子カルテを操作いただき独自の判断でおすすめください。
西脇病院代表者 花菱アチャコ
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長崎市保健所の方々は定刻の13時30分より15分ほど前に当院に到着。案内窓口の職員が帳簿等を準備した部屋に案内した。そこで案内した職員の報告によると、「西脇病院代表 花菱アチャコ」を呼びつけになることなく、さっそく各種帳簿の閲覧、電子カルテの操作にチャレンジされたそうである。
その後、必要な書類関係が数点見当たらない、確認したいとのメモが、花菱アチャコを呼びつけることなく、当院職員に渡された。それは概ね準備していた帳簿類と電子カルテ内に存在するものであった。帳簿内の見落としはともかくとして、電子カルテはほとんど操作できてなかったようである。あれだけ行政はIT化、IT化と言っておられるのに困ったものである。
そして、恒例の病棟巡視も監査に来られた8名中7名は、ためらっていたようだが、長年当院の精神医療活動に関心を寄せてくれていた保健所職員に促され行われた。

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長保地保第820号の立入検査実施 担当者の方へ
本日の総評は、前回2011年5月17日同様、次の日に書面にてお届け願います。
西脇病院代表者 花菱アチャコ
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上記メモも提示していたためか、例年最後に行われる当院管理者、担当職員を集合させての総評はなかった。そして、速やかに監査の結果は後日報告いたします、と言い残して帰って行かれた。おかげで、花菱アチャコの出番はなかった。よって、お叱りも受けることなく済んだ。

いやはや、これでは例年行われている医療監査なるものは、儀式ではないか。それなら、わざわざ医療機関を訪れなくとも帳簿類の提出を求めて、不備があれば改善を求め、その改善もなされず、さらに匿名、実名の「問題あり」との投書等が行政に寄せられる病院には、十分な時間をかけ、厳正な監査を行えばいいではないか。
そうか、これが無駄を省く行政改革というもんなんだな。
確かに今、公務員の給与、人員の削減が盛んに言われている。だが、私は有能な公人も多く知っている。安易な人員削減ではそんな有能な人材への仕事の負荷が増すだけだ。加えて給与が削減されれば、彼らは野に下るに違いない。
そこで、長崎の行政改革だが、平成23年5月17日の件、何の協議もなく匿名メールの受け取り先である県の部署から一気に当院管轄の長崎市保健所まで伝達され、法が行使されている。これは、長崎県のそれなりの立場の幹部職員の指示があってのことだろう。まずは、そんな人物の削減から始めてもらいたい。

*花菱アチャコ(1897年7月10日 - 1974年7月25日)は、大正昭和期の漫才師(横山 エンタツとコンビを組む)、俳優である。