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エッセイ

私も65歳になった。年金がもらえる歳だ。過去に数年間、公的機関に勤務した時期があり、その間の共済年金支給に関する書類が郵送されてきた。一時金であったが、おっと、少しはいいお小遣いになるな、とカミさんにその書類を渡した。カミさんも喜んでその手続きを踏むべく担当の部署に電話で色々と問い合わせたようだ。そこで、分かったことだが、私はまだ働いており、収入がある。そのため、かなり減額になることが判明した。私のいいお小遣いではなかった。孫の小遣い程度である。それはいいとしよう。しかし、そのわずかな年金を受け取るための手続きが大変である。色んな書類の作成に、幾つかの窓口に出向かなければならない。そして、支給されるのは、数週間後である。今日の社会秩序を安定的に維持するためには、それだけの労を惜しまない手続き、手順が必要なんだろう、と思うことにしよう。

いや、ちょっと待ってくれ。前回ブログで紹介した結核感染の情報開示に関してだが、後日、何故感染者の息子が入院しており、面会などで濃厚接触者が発生する可能性が明らかな当院に1ヶ月経っても通報がなかったのか、保健所の担当者に電話で尋ねたところ、「審査会を経て...」とのことであった。ほ~、なるほどここまで、手続き、審議、協議、決済を大事になさるのがお役所なのである。地域住民に感染が蔓延するより、大切なことがあるのだ。それは法に定められているから...と。では、あの匿名メールの一件が、何の協議もなく、手続きを踏まず、あんなにスピーディーだったのはどうして???

そしてもう一方で、こんなこともあった。当院は精神科病院である。精神科の患者さんは、時として自らの病(やまい)をその病状によって理解できないことがある。そのような時、治療者(病院)側は強制的な入院の手続きを取ることができる。その代表的なものが医療保護入院だ。それは保護者(配偶者などの家族)の同意に基づいての入院である。一方、その入院手続きで入院させられた患者側にもそれを不服として、退院を申し立てる権利がある。当院でも数日前にそのような事態が発生した。申し立てを受けて県の機関はその患者との面談の日時も決定していた。そこで、その患者の家族が県の機関に、その申し立てを取り下げてほしい、と連絡したのである。では、それを受けた県の機関の担当者はどうしただろう。こともあろうに、その担当者は当院のケースワーカーにどうしたものかと相談の電話をしてきたのだ。これは法(精神保健福祉法)に定める患者の退院請求の権利をないがしろにしようとしていることになる。何故ならば、この県の機関への退院の申し立ては、その患者を入院している精神科病院が不当に入院させているか否かをチェックするために公的機関が立ち入り、その可否を決定するためのものである。それを執行すべき公的機関が、きちんと手続きを踏んでいる患者の請求をさておき、その不当に入院させている可能性がある医療機関にそのように意見を求めてくるとは、何事だと、そこの院長に言わせてしまった。
三谷好喜のシナリオは、きっとこんなところから生まれてくるのだ。これは喜劇だね。

さぁ~面白くなってきた。この喜劇が現実なら長崎は無法地帯である。

でも、そんな喜劇、当院とっては1985年以来のことだ。ただ、そんな喜劇で過去の一番大きな出来事ついては、2007年に県当局がやっと謝罪してきた。
その後、長崎の行政機関が喜劇を演じないで、まともに機能することを期待した。しかし、私がこの半年余りブログで書き続けている匿名のメールによる当院への抜き打ち監査の件以来やはり、喜劇だ。それも、県知事名による匿名メールの件で唯一の回答があった手紙の内容で思い出しことであるが、実名無視の姿勢などと、とにかく、まともでない。やはり長崎の行政機能は、喜劇の連続だ。
だが、行政がこんなに喜劇を演じ続けてもらっては困る。加えて、厚生労働省も定義しているパワーハラスメントに該当することを県の要職に就く人物が行っているようでは、非国民としかいいようがない。こんなことだから、先の速やかに行わねばならない結核患者の件は、変に法に従って滞らせる。一方で、法に基づいて粛々と行っていい退院請求の件は、それをすすめるのを躊躇する。お役所仕事もここまでくると、何も言いたくない。

そんな長崎の行政の現状について、2012年3月2日の地元新聞は『中村県政折り返し』と題する記事のなかで、-庁内には「身内」を支えようという空気が漂う‐、と評している。そうだろうか、-身内をかばうという空気が漂っている‐、とするのが正しい。
マスコミ不況も、何もネット社会の影響だけではなさそうだ。真実を伝えることを疎かにしているからではないだろうか。

「身内」をかばうという空気、これも絆ですか?