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エッセイ

普通の人、肩書のある人

2012年10月14日、日曜日、長崎市郊外のマリンパークで、ダルクのOBらが主催するダルクを支援する目的のチャリティー・バーベキューパーティーが行われた。
私も久しぶりの休みである。ぶらりと出かけてみることにした。
だが、この歳では、バーベキューをたんまりいただくと、後の胃もたれが心配だ。そこで、一冊の本を持参して、食はほどほどにして、海辺で読書三昧と決め込んだ。幸い、薄曇りで日差しも強くなく、屋外でのんびり読書するには心地よい天気だった。

持参した本は、「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社:文・構成 野地扶嘉)だ。
文章・構成の野地は、高倉健への直接のインタヴュー、そして過去のインタヴュー記事に加えて、高倉健と親交のある人物への取材も行い、彼らの高倉健への想い、印象も紹介している。
そんな中で、幾つかのコマーシャル作りで一緒に仕事を行い、現在は仕事上もだが、月に一度くらいお茶を飲む機会を持つまでに、高倉健に信頼されている広告制作会社マザースのプロデューサー・風間克二氏の談話も伝えている。そこで、この10年、毎月会っていて彼が気付いたことを次の様に語っている。
「人間って自分の役割を演じているところがあるでしょう。社長ならば社長だと思って振る舞うし、国会議員として話したり、人と付き合ったり...。私は最近、高倉さんと会っていて、『あれっ、確かこの人、高倉健だよな、そうに決まっているよな』と思うことがあるんです。もちろん高倉さんご本人と話しているのですが、いつのまにか普通のおじさんと、いや、普通の立派なおじさんと談笑しているんじゃないかと感じています。そして思う。私はこの人のことがすごく好きだと。高倉さんって、きっと高倉健という役割を演じてないのですよ。実は自然体で普通の人なんです。だから、どんな人にでも同じように接することができる」と。
そこで、野地は【世の中には偉い人はたくさんいる。しかし、偉い人の中で肩書の重さを感じさせない人は少ない。そして、肩書に頼るほど、肩書がなくなったときに無力になってしまう。】と結んでいる。

私が読書をしているそばで、バーベキューを談笑しながら食べている面々は、ダルクのスタッフ、メンバー、OB、薬物依存症者といった肩書を一応、持ってはいる。しかし、そんなものは世間ではまったく通用しない。まぁ~普通かな、だが決して立派とは言えない若者、おじさん達である。でも、私は彼らが好きだ。高倉健との共通点を無理して探せば、健さんは刑務所出所後の人物を数多く演じてきた。ここに参加しているメンバーにも、刑務所から出所してきた当事者が数多くいることぐらいだろう(微笑)。

ところで、肩書を笠に着て理不尽な行いをしている長崎の行政トップとそれを取り巻く関係者の行為の詳細を今回一冊の本にまとめた。タイトルは「65歳の戦~生業は精神科医~」(みずほ出版新社)だ。発売は2012年10月下旬を予定している。


                       *ダルク:薬物依存症者回復施設